設立の趣意

立石 一真 氏
立石 一真 氏

 今日、日本の科学技術の進歩・発展は著しいものがありますが、エレクトロニクス及び情報工学の分野における技術革新も、いまでは社会的・経済的にきわめて大きな影響を及ぼしています。たとえば、工場では各種工程のオートメーション化が進むとともに、オートメーション機器をコンピューターや通信機器とつなぎ、工場全体を統合的に動かすシステムの実現へと向かっています。

 一方、オフィスでは、ワークステーションやパソコンなどのOA機器の普及が目覚ましく、また通信技術を利用することにより、データベースへのアクセスや情報交換も盛んになりつつあります。さらに、家庭においても、いわゆるホームオートメーション機器が浸透しはじめています。
 このように、人間が働き、生活する環境にエレクトロニクス技術に支えられた各種機器がどんどん入ってきており、しかもその技術は年々高度化・システム化してきています。しかしながら、その技術革新のスピードが速いだけに、技術革新がそれら機器やシステムを使う主体である人間に及ぼす影響が十分考慮されない傾向があります。このため、本当に使いやすい機器・システムの開発が大きな課題になっています。

  一方、今後の技術の飛躍的な発展のためには、人間の素晴らしい知識能力を規範にしたファジィなどの人工知能技術を確立し、使いやすい機器・システムの提供はもちろん、人間がより楽しく創造的な活動をするのに広く役立たせることが期待されます。

 このような情勢に鑑み、オムロン株式会社、立石一真及び立石孝雄の醵出資金により「立石科学技術振興財団」を設立し、エレクトロニクス及び情報工学の分野で、人間と機械の調和を促進する研究及び国際交流に対し助成をおこない、技術革新を人間にとって真に最適なものとすることに寄与せんとするものであります。

1990年3月